M&Aを成功に導くために~PMIとは何か

皆さんこんにちは。弁護士髙砂美貴子です。

最近、大企業のみならず中小企業の間でもM&Aが盛んにおこなわれるようになっています。M&Aとは、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略称ですが、我が国では、会社法の定める組織再編(合併、会社分割)に加え、株式譲渡や事業譲渡を含む各種手法による事業の引継ぎ(譲渡・譲受)をいいます。

ところが、M&Aというとその手続やマッチングにばかりフォーカスしたために、M&A成立後、事業成長どころか、取引先や従業員の離反を招き立ち往生するなどのトラブルが少なくありません。

そこで、このようなM&Aの失敗を防ぎ、譲渡会社と譲受会社いずれもがM&Aの目的を達成し、狙ったシナジー効果を得られるようにするにはどうすればよいかについて解説したいと思います。

この記事で分かること

(1)PMIとは何か

(2)なぜPMIが必要なのか

PMIとは何か

 一般的に、PMI(Post Merger Integration)とは、M&A成立後の一定期間(1年程度)内に行う経営統合作業をいいます((狭義の)PMI)。もっとも、M&A成立前の取り組みを「プレPMI」、プレPMIから狭義のPMI後の継続的取り組み(ポストPMI)まで含めたプロセス全般を「(広義の)PMI」といいます。このように、M&Aの成立前後にわたる取り組みとして、PMIプロセスをとらえることが重要です。

  •  PMIとは、主にM&A成立後に行われる統合に向けた取り組みであり、M&Aの目的を実現し、企業統合の効果を最大化するために必要な作業です。M&Aの成立はあくまでスタートラインにすぎません。M&Aが成功するか否かは、M&A成立後に、当初期待された効果を実現できたか否かによるのです。そのため、大企業のM&Aでは、M&A成立そのものよりも、このPMIの取り組みが最重要ともいわれています。
  • なお、「ポストクロージング」(M&Aの当事者が合意等に基づき、クロージング後の実施を予定している手続をいう。「ポスクロ」ともいう)とPMIの区別は講学上、一定の意義があるものと思われますが、ここでは敢えて採り上げません。

「中小PMIガイドライン」(PowerPoint プレゼンテーション (meti.go.jp) 

  • PMIは、①経営統合、②信頼関係構築、③業務統合の領域に分類されます。PMIはM&A成立後に実施すべき取り組みであると誤解されがちですが、M&Aの目的の明確化や譲受側の現状把握等を含め、M&A成立前から準備する必要があります。
  •  中小企業のM&Aでは、一般的に株式譲渡が多く用いられる傾向にあります。株式譲渡による場合、譲渡側の法人格はそのまま継続するので、譲渡側と譲受側を厳密な意味で統合する必要があるわけではありませんが、両当事者が一体として成長するためには、経営や業務等の点で一定程度すり合わせをする必要があります。

なぜPMIが必要なのか

  • 中小企業のM&Aに関する懸念事項を解決できる

譲渡側は、M&A成立後、自社の従業員の雇用を維持してもらえるか、事業の将来性や取引先との関係が維持されるかどうか、売却価額について強い関心を持っています。

他方、譲受側は、M&Aを実行することにより期待したシナジー(効果)(2つ以上の企業又は事業が統合することで、それぞれが単独で運営されるよりも大きな価値が生み出される相乗効果をいう。大きく、「売上シナジー」(売り上げ拡大)と「コストシナジー」(コスト削減)に分類される)が得られるか、譲渡側従業員等の理解が得られるか、自社との円滑な組織融合が実現できるか懸念する傾向にある。これらは、M&A実行過程のデュー・デリジェンス(Due Diligence(DD) 対象企業である譲渡側における各種のリスク等を精査するため、主に譲受側がFAや士業等専門家に依頼して実施する調査をいう。一般的に、「財務DD」(資産・負債等に関する調査)、「法務DD」(株式・契約内容等に関する調査)等から構成される。他にも、ビジネスDD、税務DD、人事労務DD等多様なDDが存在する)により一定程度解消可能ですが、得られるM&A実行過程では得られる情報が限られているためすべての懸念事項を解消することはできません。そのため、M&A成立後の取り組みとして、PMIを通じた円滑な統合が重要となるのです。

  • 中小企業のM&Aの満足度を上げる

「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「成長に向けた企業間連携等に関する調査(2017年11月)」によれば、M&A実施後、総合的な満足度が「期待を下回っている」と回答した企業は24%でした。その理由として、「相乗効果(シナジー)が出なかった」、「相手先の経営・組織体制がぜい弱だった」、「相手先の従業員に不満があった」等が多かったようです。これらは、M&A後の統合作業にかかわるものである事に鑑みると、M&Aの当初の目的を達成し成功に導くには、PMIを成功させることが重要であるといえます。

  • 早期にPMIの検討に着手する

M&Aの成果を感じている譲受側ほど、早期からPMIを視野に入れて検討している傾向があります。「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「成長に向けた企業間連携等に関する調査(2017年11月)」によれば、M&Aについて「期待を上回る成果が得られている」、「ほぼ期待通りの成果が得られている」と回答した企業の約6割が、基本合意締結前又はDD実施期間中に開始しています。

最後に

以上のように、企業の成長戦略やEXITの一環としてM&Aを検討されている企業は、ぜひ早期のPMIも視野に入れた計画を策定するようにしてください。

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