破産が唯一の方法ではない!会社のたたみ方①~「解散」とそれに続く「清算」の概要

 皆さんこんにちは。弁護士髙砂美貴子です。

 会社を長く経営していると、様々な事情で事業継続が困難になることがあるでしょう。その典型的な理由は資金繰りの悪化ですが、それ以外にも、最近では新型コロナ感染症の大流行、ウクライナ戦争や円安による原材料高騰、人手不足等、予想外の要因により事業継続が脅かされています。

 このような場合、経営者としてどのような判断を下すべきでしょうか。債務超過であれば破産、かろうじて黒字ではあってもジリ貧であれば廃業、と簡単に片づけていませんか。

 本稿では、事業継続が困難となった経営者が会社を畳む際、どのような手続を選択できるのか、その全体像について解説します。更に、その数ある会社の畳み方のうち、特に「解散」について詳しく採り上げます。

 どうぞ最後までお付き合いください。

この記事でわかること

  • 会社の畳み方に関する手続はどのようなものがあるのか
  • 解散とは
  • 通常清算と特別清算の概要
  • まとめ

会社のたたみ方の全体像

会社のたたみ方には、大別して以下の3つの方法があります。

  • 解散:会社の法人格が消滅する原因となる事由。会社法471条に具体的に規定されている。
  • 休眠会社:株式会社のうち、当該会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したものをいう(会社法472条1項)
  • 廃業:自主的に事業を辞めることをいう。必ずしも財務状況が悪化した場合に限られない。

解散とは

解散とは、会社の法人格が消滅する原因となる事由であり、会社法(以下、「法」といいます)471条に規定されています。具体的には、以下のとおりです。

  • 定款所定の存続期間の満了(例:会社成立から20年と規定した場合)
  • 定款所定の解散事由の発生(例:鉱脈が尽きたら解散すると規定していたところ、実際に鉱脈が尽きた場合)
  • 株主総会の特別決議(法309条2項11号)
  • 合併(消滅会社のみ)
  • 破産手続開始決定
  • 解散命令(法824条1項)、解散判決(法833条1項)

 特に、⑤破産開始決定は重要なので、これはまた別の記事で解説します。ここで覚えておいて頂きたいのは、「破産」はあくまで会社を畳むための手続きのひとつにすぎず、他にも様々な手続きや手法があるということです。このことをぜひ覚えておいてください。

解散の後は清算が必要

ここでは、株式会社に限定して解説しますが、④⑤以外の事由が原因で会社が解散した場合、最終的に株式会社をたたむには、清算手続を実施しなければなりません(法475条1号)。

会社が解散すると、当該会社は、その事業や業務を終了し、各種の契約関係を解消し、財産を換価処分し、債務を返済したうえで残余財産を株主に分配しなければなりません。また、労務関係の手続、会計上の処理、税務申告、各手続段階における登記手続等も必要です。そのため、会社が解散し、清算手続がスタートしたからといって、直ちに会社が消滅するわけではありません。法475条に基づいて清算手続を行う会社(以下、「清算会社」といいます)は、清算手続が完了するまでの間、清算の目的の範囲内で存続するものとみなされるのです。逆に、この一連の清算手続が完了すると、会社は消滅します。

清算手続は、株式会社の財務状況により、通常清算と特別清算という2種類の手続が用意されています。

通常清算とは、会社の清算手続のうち、その財産をもって債務を完済することができる(資産超過)会社について採用される清算手続であり、会社法その他の設立の根拠法令に規定されています。

他方、特別清算とは、会社の清算手続のうち、会社の財産で債務を完済できない状態(債務超過)の株式会社について採用される清算手続をいいます。

ここまでの話をまとめますと、次の図のようになります。

通常清算とは

 ここからは、それぞれの清算手続について概要を説明します。

 前述したとおり、(破産手続開始決定及び吸収合併(消滅会社のみ)を除く)法律に規定された会社の解散事由が発生すると、清算手続を実施しなければなりません。

 清算会社は、清算の目的の範囲内で、清算手続が結了するまでの間なお存続するものとみなされ(法476条)、その機関として、1名又は2名の清算人を選任します(法477条1項等)。このほかにも、監査役や監事等を設置しなければならない場合もあります(法477条4項、社会福祉法人法46条の5第3項等)。

 通常清算の流れは、以下のとおりです。

特別清算とは

当該法人に債務超過の疑いがあるとき、又は清算人や清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合、債権者、清算人、監査役又は株主は、裁判所に対して特別清算手続の開始申し立てをします(法511条1項2項、510条)。

特別清算は、通常手続と同様、清算人が清算会社の期間として清算事務を行いますが、裁判所の監督のもとで手続を遂行する点が、通常清算と大きく異なります。

また、特別清算は、債務超過(株式会社の財産で債務を完済できない状態)の株式会社について行われる清算手続であるという点で、破産手続と共通しています。しかし、破産手続は、裁判所が選任した破産管財人が業務を行うのに対し、特別清算では、当該株式会社が選任した清算人が清算業務を行うという点で異なります。

更に、特別清算では、債務超過を解消して清算手続を結了させるために、各債権者との間で個別に弁済方法や債権放棄に関する和解をするか(個別和解型)、債権者集会で協定を行う(協定型)必要があります。これに対し、破産手続は、債権者が同意するかどうかは無関係に換価売却や配当手続を行い、すべての債権者を債権額に応じて平等に取り扱う点が、特別清算と大きく異なります。

 このように、特別清算はあらかじめ事業活動は停止している場合も多く、会社が選任した清算人が債権者と協議をしながら手続を進めていく点で、ソフトランディング的な清算手続であるといえます。

最後に

以上が、数ある会社のたたみ方の中でも、「解散」と呼ばれる手続とそれに続く「清算」手続に関する概要です。清算手続のうち、通常清算は、会社(法人)を清算する場合の最も原則的な清算手続であり、株式会社はもちろん、それ以外の法人もその対象に含みます。また、会社が債務超過に陥っている場合、特別清算手続を採用することになりますが、会社が選任した清算人が債権者と協議をしながら手続を進めていく点で、破産手続よりもソフトランディング的な手続きといえます。

通常清算、特別清算の詳細については、また別の記事で説明したいと思います。

これから会社をたたもうかご検討中の皆様のご参考になれば幸いです。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

弁護士 髙砂美貴子

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