宅建業者は、取引対象物件において生じた人の死に関する事実を、どの範囲で告知する義務を負うのか。

皆さんこんにちは。弁護士髙砂美貴子です。

日々多数の不動産取引を扱う宅建業者であれば、いわゆる「事故物件」の処分を依頼されることもあるでしょう。しかし、取引の対象物件において過去に生じた人の死に関する事案について、宅地建物取引業者による適切な調査や告知に係る判断基準がありません。そのため、実際の取引現場でどの範囲で告知すればよいのか、判断に迷われるケースが頻繁に見られます。その結果、特に、潜在的孤独死のリスクのある高齢者への賃貸住宅の供給が訴外されているとも言われています。このような事態は、社会的にも不利益です。

そこで、本日は「宅建業者は、取引対象物件において生じた人の死に関する事実を、どの範囲で告知する義務を負うのか」について解説しようと思います。

この記事で分かること

(1)「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」の制定経緯

(2)宅建業者の調査義務の範囲

(3)宅建業者が人の死を告知すべき義務を負う場合、負わない場合

「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(国交省)の策定

国土交通省では、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈について、令和2年2月より「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」において検討を進め、同検討会での議論や、本年5月から6月に実施したパブリックコメントを踏まえ、標記ガイドラインをとりまとめました。

本ガイドラインは、取引の対象不動産において過去に人の死が生じた場合において、宅地建物取引業者が宅地建物取引業法上負うべき義務の解釈について、現時点における裁判例や取引実務に照らし、一般的に妥当と考えられるものを整理し、とりまとめたものです。

宅建業者の調査義務の範囲

売主・貸主に対し、過去に生じた人の死について、告知書等に記載を求めることで、通常の情報収集としての調査義務を果たしたものとする。

人の死について、原則として告知しなくてよい場合

①自然死

日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)

③賃貸借取引の対象不動産・日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が発生し、事案発生から概ね3年が経過した場合

告知しなければならない場合

人の死の発生から経過した期間や死因に関わらず、

①買主・借主から事案の有無について問われた場合

②社会的影響の大きさから、買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合

まとめ

最近、高齢者の孤独死や、8050問題により同居者がいるにもかかわらず発見が遅れるケースが後を絶ちません。誰もが、事故物件に遭遇する可能性がありますので、ぜひ、参考にして頂ければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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